仙禽 UA かぶとむし の楽しみ方|なぜ“オリ”は最後にとっておくのか

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夏の夕暮れに、かぶとむしがやってきた。

風鈴がチリリと鳴っていた。
ひぐらしの声が遠くで重なり合い、空はゆっくりと群青に変わっていく。
そんな夕暮れ時に、冷蔵庫の奥で出番を待っていたのが——

『仙禽 かぶとむし UA』


この時、日本酒なのになぜ王冠かということに気づいてなかった…。

この酒には、夏の空気がそのまま詰まっている。
無濾過原酒、アルコール度数は13度。 軽やかなのに、
オリがモッサモサなんて、一筋縄ではいかない野性味を感じる。

その炭酸、まるで夏の乱気流。

瓶を開ける瞬間、すでにただならぬ気配。
グラスに注げば——

バチバチ、ビリビリ、暴れ出す泡。

う、うわ、しまったー!!

見た目は日本酒、だが中身はまるでスパークリングワイン。
いや、そんな生やさしいものじゃない。 これはもう、

炭酸界のかぶとむしである。

シュワっと軽く見せかけて、勢い良く泡が吹く。
なるほど、穴空きの栓でも耐えきれない為、王冠だったのか……。

しっかり注意書きを読めば良かった。
こうなることを想像してるあたり、さすが仙禽。

これがまた…口に含めば、夏がはじける。

一口目に感じるのは、はっきりとした酸味。
でも、ツンと来るような刺激ではなくて、まるで山の湧き水にレモンを一滴たらしたような、透明感のある酸

その酸を追いかけて、白ぶどうのようなやさしい甘さ。
甘酸っぱいバランスに、舌が驚き、心がゆるむ。

この酸、ただの爽やかさじゃない。
生酛(きもと)造りならではの、自然由来の乳酸菌による発酵と、木桶仕込みがもたらすやわらかな丸み
仙禽UAの核には、そんな伝統製法が息づいている。

後味には、ほんのりとした苦み。
——あの夏の終わり、夕立のあとの涼風みたいだ。
ただ甘いだけじゃない。
余韻に、少しの切なさがある。

ちなみに…「UA」って何のこと?

「UA」はUnited Arrows(ユナイテッドアローズ)の略。
感度の高いライフスタイルを提案するこのセレクトショップと仙禽がタッグを組んだのは、“日常の中で、自然と美しく酔う”という世界観をともに描けるから

酒造りの原点に立ち返ったような生酛と木桶仕込み、 そこにUAのデザイン哲学が重なることで、ただの日本酒じゃない、「選びたくなる日本酒」が生まれた。

塩気のある肴が、最高の相棒。

この酒の本気を引き出すなら、つまみはシンプルに限る。
焼きとうもろこし、枝豆、塩むすび。 どれも、炭酸と酸味の波にぴったり寄り添う。

意外にもおすすめは「おしゃぶり昆布」。
キリッとした酸が、塩気と出会い、口の中でとろみとうまみがでた昆布はリーズナブルでいて夏のごちそうだ。

かぶとむし、という名の意味。

どうしてこんな名前なんだろう? 最初はそう思った。
けれど、飲んでみてわかる。

あの頃の夏休み。
虫取り網、縁側、麦茶。 瓶の中には、あの夏の記憶と、子どもの頃の自分が封じ込められている。

きっとこれは、「童心で飲め」というメッセージ。
わかりやすい派手さではなく、心の奥に潜む夏を引き出してくれる酒。

モイの〆酒評|“オリ”は、最後に感じせたかった童心なのかもしれない。

炭酸が半端ない……
まずそこに全力でうなずいてほしい。
まるでラムネ。
でも、それだけじゃない。
しっかりとした酸、みずみずしい果実感、絶妙なバランス。

四合瓶で1,800円前後と手に取りやすく、しかも限定流通。
冷蔵庫に1本入れておくだけで、

「夏を迎えに行く準備」ができる。

日本酒初心者にもすすめられるけど、酒好きこそハマる一本。
この夏、「かぶとむし」と出会えた人は、ちょっと幸せだ。


最後にこのかぶとむしを愉しむ飲み方を伝授しよう。

そう、それは

――カブトムシが夜更けに樹液をため込んでから豪快に吸う、その“収穫の瞬間”をグラスの中で再現すること。
仙禽〈かぶとむし〉のオリはラストまで取っておき、最後にほとんどがオリになった酒店を注ぎ、飲み干す
――それこそが、

50歳目前という大人になった今でも…

かぶとむしになった気分という童心に帰れる、ひと夏の醍醐味だ。

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