
①で「貴族の館」の門をくぐって、ようやく辿り着いたエクシブ蓼科。
今回の②は、スイート客室の“規格外”から、大浴場、ラウンジ、紅葉の外歩きまでを一気に繋げる回です。
2人で泊まるには贅沢すぎるのに、なぜか落ち着いてしまう。
それがこの館の怖さ(褒め言葉)なんだと思う。
超絶重厚、スイートルームという別世界
どこを見ても「手を抜かない英国調」。
まずリビングで、空気の密度にやられる。
ふわっとしてない。
“どっしり”してる。
ここでコーヒーでも飲んだら、外の世界の予定が全部どうでもよくなるタイプ。
まだ夕飯前なのに「もう寝てもいいかも」と思わせる危険な寝室。
寝室は寝室で、また別の静けさがある。
枕がいい。
照明がいい。
そして何より、2人で泊まるには広すぎて笑ってしまう。
でも、その“広すぎる余白”が、贅沢の正体なんだろうな。
朝の身支度が、儀式っぽくなるやつ。
洗面も化粧室も、全部が「これが標準ですけど?」という顔をしている。
こっちは「すみません、普段はもっと庶民です」と心の中で名乗りたくなる。
こういう“見えない場所の本気”が、館の格を決める。
ハンガーがいいと、服がちょっと良い服に見えるから不思議。
そして「ここでジャケットを掛けたら、ちゃんとした大人になれそう」とか思ってしまう。
思うだけでいい。
こういう一手が、旅の気分を完成させる。
そしてウェルカムの甘いもの。
信州らしい雰囲気もあって、旅のスイッチが入る。
「とりあえず、いったん落ち着こう」って言いながら、落ち着きすぎるやつ。
羽織った瞬間に、生活感が消える。
バスローブが分厚いと、テンションも分厚くなる。
もうこの時点で「大浴場、あとでいいかも」とか思いはじめるのが危険。
でも、危険なほど心地いいのがスイート。
風が冷たくて、景色はやさしい。
バルコニーに出ると、蓼科高原の風がすっと入ってくる。
こういう風を浴びると、旅って「遠くに来た」だけで勝ちだと思う。
大浴場の前に、つい湯を張る。部屋ジャグジーでバブルバス
次は大浴場。
……のはずなんだけど。
目の前にジャグジーがあると、人は弱い。
「大浴場の前に、ちょっとだけ」って言い訳して、お湯を張る。
この瞬間の背徳感が、ちょっと楽しい。
ここで一回“整う”と、大浴場が第二ラウンドになる。
ふわっと泡が広がって、ジェットの音がして。
これ、2人で泊まる贅沢としては上位すぎる。
「大浴場に行く前のウォームアップが、これって何?」と自分にツッコミを入れつつ、しっかり満喫。
白い世界へ。クアプラザで大浴場『からまつの湯』
さあ、気を取り直して大浴場へ。
ここから、館の雰囲気がガラッと変わる。
とにかく白い。
明るい。
リゾート感が強くて、気分が勝手に上がる。
“英国調の重厚”から、“リゾートの軽やかさ”へ。
この白さ、見た目だけじゃなくて気分まで明るくしてくる。
さっきまで貴族の館で静かにしてたのに、急に「泳げそう」とか思う。
しかも、ここの優雅ポイントがもう一つ。
タオルとバスタオルが、受付で“入る都度”もらえる。
お風呂セットを抱えて移動しないでいい。
これ、地味に革命。
手ぶらで大浴場に行くって、優雅の最短ルートだと思う。
“準備感”が消えると、旅がさらに上品になる。
からまつの湯で、しっかり温まる。
(湯の中の話は、だいたい語りすぎると野暮になるので、今日はこのくらいにしておく。)
でも一言だけ。
「ここまで整えられた動線で入る大浴場、気持ちいいに決まってる」。
湯上がりはラウンジへ。アップルバーチで、信州を飲む
湯上がりの足取りって、ちょっと軽い。
そのままラウンジへ。
ここがまた、絵になる。
“静かに飲める場所”って、旅に必要。
ここでおすすめされたオリジナルカクテル、アップルバーチ。
名前からして、もう信州。
しかもシェイカーでミキシングされるタイプって聞いたら、飲むしかない。
香りだけで、ちょっと気分が整う。
甘さだけじゃなく、キレもあって大人。
信州りんごの香りが先に来て、飲むとすっとまとまる。
こういうカクテルって「味」だけじゃなくて「時間」を飲んでる感じがする。
ラウンジの空気、木の内装、窓の外。
それ全部込みで、アップルバーチ。
紅葉の外歩き。長い松ぼっくりと、鹿2頭と、帰還
いい具合に温まって、いい具合に飲んだら、帰りは外を歩く。
紅葉を見ながらの外歩きって、ただの移動が小さな旅になる。
静かで、足音まで気持ちいい。
“遠い”が、楽しい。
歩いていると、長い松ぼっくりを発見。
「え、これ中ボス?」みたいなサイズ感で笑う。
蓼科の自然は、たまにスケール感をバグらせてくる。
“自然の造形”に素直に驚けるのも旅の良さ。
さらに進むと、鹿に遭遇。
しかも2頭。
バリケードの向こう側とはいえ、こういうのは嬉しい。
「非日常、いました」って感じがして、旅の密度が増す。
この“間”が、リゾートの時間。
広大な敷地をひた進み、ようやくスイート棟の入口へ。
戻ってきたのに、まだ旅の途中みたいな感覚が残っている。
それがエクシブ蓼科の不思議。
この切り替えが気持ちいい。
部屋に帰って、ひと眠り。
そして次は、楽しみのイタリアン「ルッチコーレ」のディナーへ。
ここから夜が本番、ってやつです。
モイの〆旅メモ
スイートって、広いから贅沢なんじゃなくて。
“余白の使い方”が贅沢なんだと思った。
部屋ジャグジーで泡を立ててもいいし、手ぶらで大浴場に行ってもいい。
ラウンジで信州のカクテルを飲んで、紅葉の道で鹿に会ってもいい。
全部が「そうしていい時間」になってる。
次回は、いよいよディナー編。
走れているのは、見てくれている皆さんのおかげ。これからもよろしくお願いします。

