【実録】実家売却までの日々|第1話 空き家をどうする?はじめての不動産屋選びと「0円査定」の現実

【実録】実家売却までの日々 空き家の画像

2025年夏の終わりに、最愛の母が亡くなりました。
そこから葬儀や各種の手続きが続き、今は相続の名義変更も終えています。
とある住宅街には、今は誰も住んでいない「母の家」が残っています。
いずれ固定資産税の通知も、僕のところに届くようになるはずだと分かってはいるのに、手はまだ止まったまま。
いちばん大きなテーマである「この家をどうするか」だけが、ずっと喉につかえています。

売るのか、貸すのか、そのままにしておくのか。
考えれば考えるほど手が止まってしまう。
そんな状態から一歩だけ前に進もうと、ある日、初めて地元の不動産屋のドアを開けました。

★この連載は、そんな僕が現在進行形で進めている実家売却のリアルを、ライブ感ある形でお伝えしていきます。

空き家になった「母の家」と、隣に建った2軒

空き家になった実家と周辺の様子

母の家は、父と母が暮らし、最後に母が自宅から施設・病院へと送り出された場所です。
父は、僕が20代の頃に二度目のくも膜下出血で他界していて、しばらくは母ひとりの家でした。
建物は正直、ボロ家と言っていい状態。僕も中を見れば分かるし、母の生活の歴史と「老朽化」はセットでそこにあります。

一方で、土地はそこそこの広さがあります。
そして隣の土地はすでに売却され、今は建売の家が2軒建っています。
つまり、うちの土地も業者から見れば「2区画に割って、2棟建てられる土地」という扱いになる可能性がある。
この“隣の現実”が、僕の背中を押していました。

「不動産屋は悪徳が多い?」ネットの情報にビビる

不動産屋選びのネット情報に悩むイメージ

じゃあ不動産屋に相談しよう、と思う。
普通ならそこで終わる話なのに、僕の足を止めていたのは「ネットの情報」でした。

検索すればするほど出てくるのは、

  • 「まず3社は回れ」
  • 「囲い込みに注意」
  • 「両手仲介で儲ける業者に気をつけろ」
  • 「相場より安く買い叩かれるな」

こんな言葉たち。
もちろん、全部が全部そうだとは思っていません。
でも、「親の家を売る」という、ただでさえしんどいテーマに「悪徳業者」のイメージが重なると、もう一歩が出にくい。

そんな中で、よく目にしたのが「不動産屋は3件回れ」というやつ。
たしかに、いきなり1社で決めるのは怖い。
ただ、僕の場合は「闇雲に当たる」のも違う気がして、最初から候補を3つに絞りました。

  • ラジオで知った、相続買取の専門業者(相続案件に慣れていそう)
  • 名前を聞いたことがある、大手の不動産代理店(情報量と仕組みが強そう)
  • 地元の不動産屋(地域の相場感と現場のリアルが強そう)

この3つを比べれば、「どこが強くて、どこが弱いか」が見えるはず。
そして最初の一歩として僕が選んだのが、いちばん身近で、地元の空気を知っている不動産屋でした。

服装はもちろんスマートカジュアル。
だらしない格好で行くと、正直、足元を見られるリスクが上がると思っています。
不動産の相談は、こちらが「何も知らない状態」で入ることが多い。
そこに見た目の緩さが重なると、「この人は押せる」「細かい説明は省いても通る」と判断されやすい。
価格の根拠が薄いまま話が進んだり、こちらに不利な条件(費用負担や減額理由)を強めに置かれたりする。
もちろん全ての業者がそうじゃない。
でも、最初の数分で“交渉の空気”が決まる世界だから、僕は入口から不利を背負いたくなかった。
だからこそ、スマートカジュアルで行きました。

迷う人は、僕がまとめた「スマートカジュアル完全ガイド」も置いておきます。

正直、僕が不動産屋の立場だったら、だらしない格好の方にはやはり、それなりの対応になると思います。
人はどうしても、最初の印象が重要で
「この人に時間を使う価値があるか」
を測ってしまう。
高いものでなくても良いんです。
ちゃんと清潔感があれば良いのです。
これで、“足元を見られる確率”は下げられると思ってます。

閉店間際の地元不動産屋へ行ってみた

夕暮れの地元不動産屋へ向かう

なんとなく思い立ったのは、午後4時20分。
営業時間は午後5時まで。
店までは近くて、急げば10分もあれば着く距離です。
でも、時間帯としては完全に閉店間際。
それでも、その日は妙に「今日だ」と思ってしまった。

もう年末。
今日逃したら、仕事に揉まれて、気づけば来年へ持ち越しになる。
そんな未来がリアルに見えて、意を決して電話しました。

「相続した不動産のことで相談があるのですが、これから伺っても大丈夫でしょうか?」
我ながら、遠慮と焦りが混ざった言い方だったと思います。
それでも電話口の返事は、思ったより柔らかかった。
「大丈夫ですよ。どうぞお待ちしております。」
その一言で、止まっていたものが少しだけ動き出しました。

行ったのは、ほぼ閉店間際。
それでも社長は、嫌な顔ひとつせず話を聞いてくれました。

席について、伝えたのは、ちょっと失礼かもしれないような話の数々……。
でも、正直な気持ちでした。

「ネットを見ると、不動産屋は悪徳業者が多いって書いてあって。今日は、まず人柄を見に来ました。」

その流れで僕は、もう一歩だけ踏み込んで言いました。
「不動産業界って、悪徳業者が多いと聞きますが…」
すると社長は、即答でした。
「はい、わかります。普通の方は仕組みがわからないですからね。」

そして社長は続けて、僕が欲しかった“安心材料”を出してくれました。
「とりあえず私からの安心材料としては、免許番号です。」

免許番号の見方は、僕もあとで調べて整理しました。
不動産屋選びで迷ったときの“最低限の安心材料”として、ここにまとめてあります。
【ガイド】実家売却までの日々 不動産屋の「格」は数字に出る

話を進めると、社長がふと、こんなことを言いました。
「うちの子どもも、実は◯◯学校に通ってるんですよ。」

この一言が、僕の中では意外と大きかった。
なぜかというと、地元の生活圏が同じだと分かると、こちらが一方的に“お客さん”ではなくなるからです。
変なことをすれば評判は回るし、会おうと思えばどこかで会える距離感。
そういう関係性があるだけで、人は急に雑なことをしにくくなる。
僕はそこで、「この人、地元でちゃんと生きてる人だな」と感じました。

もうひとつだけ、確認したいことがありました。
悪徳業者はレインズに載せない、という話を聞いていたからです。
なので僕は、ストレートに聞きました。
「レインズには、載せますか?」

社長は間髪入れずに言いました。
「もちろん。今も繋がってますし使いますよ」
その即答も僕にはかなり大きかったです。
“質問にちゃんと答えてくれる”って、それだけで安心材料になる。

そこから僕は、事実を整理するように話しました。
相続で名義を変えたこと。
家が今は空き家になっていること。
隣の土地は売却されて、2棟建売が建っていること。
そして、相続空き家の3,000万特別控除を使って売却したいと思っていること。
ひとつずつ、かたまりになっていた情報を口に出していきました。

社長はそれを遮らずに聞いてくれて、途中でポツリと前向きなコメントをくれました。
3,000万特別控除、それはいいと思います。話を聞いた感じだと使えると思いますよ。」

その言葉が出たところで、僕はすぐに聞きました。
ずっと頭にあった、隣の“2棟”の話です。
「隣のようにうちも2区画に割って2棟建てる業者に売れますか?」
社長は迷わず言いました。
「それはとても良いですね。土地の面積を見ると行けると思いますよ」

その瞬間、僕の中で点が線になった気がしました。
相続の控除の話と、2区画の可能性。
“売却の現実”が、ようやく輪郭を持ち始めたんです。

「建物の価値は0です」とはっきり言われた

建物の価値はゼロという厳しい現実

一通り話を聞いたあと、社長が口にした言葉はこうでした。

「お話を聞いたところご実家の向かい側は◯◯さん宅のところですよね……知っております。残念ながら建物の価値は0、無いと思います。」

グサッとくる言葉ではあります。
でも、これは現実だと思っています。
むしろここを曖昧にされる方が、僕としては気持ち悪い。

続けて、社長はこうも言ってくれました。

「ただ、仲介で粘れば、古屋をご希望のお客さまによりますが、少なくともプラス数十万円にはなると思います。」

完全に「ゴミ」として扱うのではなく、古家付き土地として欲しがる人も一定数いる。
そこはちゃんと可能性として残して話してくれるところに、誠実さを感じました。

その流れで、僕は「残置物がまだかなり残っている」ことも正直に話しました。
すると社長はこう言いました。
「うちでも対応できますよ。
ただ、なるべく残置物は片してもらったほうが良いです。」

理由も、ちゃんと続けてくれました。
「少しでも減らしたほうがお客様にお金が残りますから。」
実際に、つい先日も仲介依頼の物件で、遠方から残置物処理の作業に来ていた方が、疲れ果ててしまって、最後は社長に残置物処理を依頼したそうです。
しかもその方は売却した家のすぐ近くに住んでいたらしく、社長は地図を出して「この辺り」と場所感を教えてくれました。
近いのに、しんどい。残置物ってそれくらい体力を削る。
僕はその話を聞いて、残置物の現実も、ようやく腹落ちしました。

「土地◯◯◯万」という机上の数字

提示された土地の査定額

そして、核心の話。
社長が机上で出してくれた土地の買取見積額は、

◯◯◯万円(土地価格)

という数字でした。

ここから、

  • 測量費
  • 契約書の印紙代
  • 仲介手数料
  • 残置物(家の中の荷物)の撤去費

などが引かれていく、という説明でした。

「建物は0」とはっきり言われた上で、土地だけで◯◯◯万円という数字が出た。
僕自身が事前にネットや路線価を見て「このくらいかな」と思っていた金額より、正直、悪くないラインでした。

相続空き家の3,000万特別控除が使える前提なら、税金で大きく持っていかれることもない。
「全部終わって手元に残るお金」が、頭の中でようやく現実味を持ち始めました。

売却を急いではいけない、という情報もネットで見ていました。
焦って決めると、冷静な比較や確認が飛ぶ。
「早くお金が欲しい売り主」だと思われると、足元を見られて妥協した金額で手を打とうとされる、と聞いた。
それは避けたい。
なので僕は最後に、社長にこう伝えました。
「社長、売却は急いでませんので。」

もちろん、これはあくまでこの日の机上査定の数字。
正式な査定や、売り方(仲介か業者売却か)によって変わる余地は大きい。
それでも、「全くのゼロベース」から「土地◯◯◯万」という、ひとつの物差しをもらえた意味は大きかったです。

※私は地元の店舗へ行きましたが、「いきなり対面はハードルが高い…」という方は、まずはネットでの机上査定で「大まかな金額」を知ることから始めるのも、ひとつの手です。

ミライアスで査定を依頼してみる

ひと通り聞き終えて、僕は席を立ちました。
「社長、わかりました。今日はありがとうございました。」
いったんここまでの情報を受け取ったうえで、最後にこう伝えました。
「ネットで見ると“3社は回れ”ってあるので、回ってからまた検討します。」

すると社長は、嫌な顔ひとつせずに、こう返してくれました。
「はい、ありがとうございます。」
そして笑顔で送り出してくれました。
その反応だけで、「押してくるタイプではないんだな」という安心が、少しだけ増えました。

不動産屋を出てから、僕は少し考えました。
社長の話に矛盾はないし、言い方も誠実だった。
僕の不躾な質問にもしっかりと話してくれた。
しかも同じ地元に子どもたちもいる、という話。
つい先日、残置物の相談も実際に受けたという話。
どれも、「地元でちゃんとやってきた人」に見える材料でした。

翌日、僕は社長に電話しました。
「社長に依頼したいと思います。」
すると社長は、一瞬だけ驚いたように言いました。
「え?3社回るのでは…?」

僕は答えました。
「大丈夫です。社長は信頼できると感じましたので。どうぞ宜しくお願いします。」
社長は少し笑って、こう返してくれました。
「ありがとうございます。」

ただ、ここでひとつ現実的な話も出ます。
「すみません、しかしながら正月休みになってしまうので動けるのは来年8日以降になってしまいます…。」
僕は即答しました。
「問題ありません。どうぞよろしくお願いします。」

社長は最後に、改めて言ってくれました。
「わかりました。こちらこそどうぞ宜しくお願いします。」

そう。僕がこの電話を“年明け”まで待たなかった理由があります。
年末年始は、協力業者さんや関係先と食事や話す機会が増えるはずだからです。
そのタイミングで、社長の頭の片隅に「年末に入った、あの案件」が残っていてほしかった。
気をよくしてもらって、僕の物件にも少しでも良い形で反映してもらいたかった。
小さな打算かも、意味の無い事かもしれないけれど、これは僕なりの“交渉の仕込み”でした。

こうして、僕の実家売却は、ひとりの信頼できそうな社長とともに動き出すことになりました。
でも、そもそもなぜ僕が「実家を売る」という決断に至ったのか。
「子供に残したほうがいいんじゃないか?」という葛藤や、年明け早々に動き出した“測量”の話などは、また次回お話ししようと思います。

これから売却を考える方へ

僕は運良く地元の不動産屋さんと縁がありましたが、
もしツテが一切ない状態でスタートするなら、
まずは「自分の家の適正価格」をネットで調べてから動くと思います。

何も知らずに相談に行って、安く買い叩かれるのだけは避けてくださいね。

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