伊豆旅④|まるでプロヴァンス?中伊豆ワイナリーのシャトーで鐘を鳴らす午後

中伊豆ワイナリーヒルズのシャトーとブドウ畑と鐘
目次

伊豆旅④|中伊豆ワイナリーで鳴らす鐘

クラフトビールでほろ酔いになった
修善寺のベアードブルワリーを後にし、
僕らは再び旅を続ける。

山あいの道を進み、
木々のカーテンのカーブを抜けた瞬間、
風景がふっと開ける。
中伊豆ワイナリーヒルズにあるシャトーの建物と鐘楼の全景
目の前に広がるのは――

南仏プロヴァンスの丘を思わせる、
陽光に包まれたブドウ畑
だった。

丘の上には、白壁のシャトーが静かにたたずんでいる。

中伊豆ワイナリーヒルズ
そしてその中心

Chateau T.Sと書かれた中伊豆ワイナリーの石造りの入口看板とブドウ畑
シャトー・ティーエス

僕らの旅が異国へと切り替わる場所
中伊豆の丘にひっそりと佇むその石看板は、日本とプロヴァンスの境界線。

ここから、午後の風景が静かに動きはじめた。

中伊豆ワイナリーの外観
その姿はまるで、
ボルドーの片隅から時を越えてやってきたような気品と温もりに満ちていた。

中伊豆ワイナリーエントランス
25周年記念の飾りがある。
25年の時を重ねた白亜のシャトー。
その扉を開けた瞬間、
僕らの旅はプロヴァンスへと滑り込んだ。

志の鐘の解説パネル alt: 中伊豆ワイナリーにある「志の鐘」の歴史と特徴を説明した案内板
その名は「志の鐘」
300年の伝統を受け継ぐフリッツェン社のカリヨンは、
静かな誓いを、空に響かせるのだろう。

中伊豆ワイナリーの鐘塔への螺旋階段
足元に響く、ギシリという音。
僕らは、鐘楼へと続く鉄の螺旋を一段ずつ踏みしめた。
重厚な鉄扉が見えてくると、
空が近づく気配を感じた。

中伊豆ワイナリーヒルズのシャトーにある鐘楼の大きな鐘。ブドウ畑を望む高台で、旅人が鐘を鳴らす瞬間。


そびえる鐘楼の前に立ち、僕らは言葉もなく見上げた。

ユンがそっと鐘の紐を握り、ひとつ、音を放つ。

ぜひ、あの鐘の音を――
ワイナリーの静寂に響くその一音をお聴き下さい。



カラン……

大きく、澄んだ音が空に舞い上がり、午後伊豆をやさしく揺らした。


ユンは空を見上げて、ふわりと笑う。

「ここ、本当に伊豆なんだよね?」

その問いに誰も答えない。ただ、心のなかで強くうなずいた。

石畳の道、シャトーに映る雲の影、やわらかい風。

この場所に流れるのは、時計の針とは違う“旅の時間”。


そう…僕らは伊豆で、少しだけヨーロッパを旅している。


中伊豆ワイナリーヒルズ|基本情報

次回予告|その一杯に恋をする、テイスティングの午後

鐘を鳴らした僕らの足は、ふたたびシャトーの中へ。
グラスに注がれる白泡、葡萄の香り、
そしてユンの瞳に浮かんだ笑み。

次回、伊豆旅⑤「シャトーで白泡に酔う午後」へ。
その一杯は、あなたの記憶にもきっと残る――。

伊豆旅ナビ|旅の記憶をたどる

風が吹くまま、気の向くまま――
修善寺から始まった旅は、そっと地図を描いていく。

それは、竹林に迷い、蕎麦に癒され、ビールで頬を染め、
そして今、シャトーの鐘が鳴った――。

旅の軌跡を、もう一度。

  • ▶ 伊豆旅① 修善寺の竹林に迷い込む
  • ▶ 伊豆旅② 蕎麦の香りに立ち止まる
  • ▶ 伊豆旅③ クラフトビールに心ほどける
  • ▶ 伊豆旅④(当記事)鐘を鳴らし、プロヴァンスを想う
  • ▶ 伊豆旅⑤(予告)シャトーで白泡に酔う午後
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