酒語辞典|ら行・完全版(ラ行)

酒にまつわる語を五十音で引ける「酒語辞典」のラ行ページです。
日本酒の酒造り用語からビールのホップ・工程、ワイン概念、銘柄・酒米・水質・テイスティング語彙まで横断収録し、プロの現場でも参照できる粒度を目指しています。
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索引(ラ行)


ら(ラ)

ラガー〈ビール/スタイル総称〉
下面発酵・低温熟成で仕上げるビールの大分類。
クリーンな発酵と澄んだ輪郭が特長で、ヘレス・ピルスナー・ボック等に展開。
【関連】ラガリングヘレス(参照:ヘ行)
ラガリング(lagering)〈ビール/熟成〉
低温での貯酒・熟成工程。
粗いエステルや硫黄系の収斂、清澄化、炭酸の統合を促す。
期間・温度・酵母除去タイミングの設計が鍵。
ラウタリング(lautering)〈ビール工程〉
マッシュから麦汁を分離する工程の総称。
ロイタータンでの濾過、リターン(Vorlauf)、スパージング設計が歩留まりと清澄に直結。
【関連】ロイタータンマッシュ(参照:マ行)
ライトボディ(light body)〈感覚特性〉
軽快な口当たり・低い粘性・短めの余韻を示す評価語。
残糖・アルコール・炭酸・タンニンの総合結果として知覚される。
【関連】ミディアムボディ(参照:ミ行)
ライ麦ビール(Roggenbier)〈ビール/スタイル〉
ライ麦由来のスパイシーさと滑らかな粘性を特徴とするドイツ系スタイル。
βグルカン管理とラウタリング難度への対策が重要。
ライスラガー〈ビール/スタイル〉
米を副原料として用い、軽快でクリスプな飲み口を狙うラガー。
水質とホップ選択で軽さと風味の両立を図る。
【関連】副原料(参照:フ行)
ラオホ(Rauchbier)〈ビール/スタイル〉
燻製麦芽由来のスモーキーな香味を持つドイツの伝統スタイル。
モルト厚みとスモークの調和が鍵。
【関連】フェノール(参照:フ行)
ラクトバチルス(Lactobacillus)〈微生物〉
乳酸菌の一属。
サワー系やケトルサワーで酸を付与し、清酒の生酛・山廃の微生物遷移にも関与する。
【関連】ケトルサワー(参照:カ行)/山廃(参照:や行)
ラクトース=乳糖(lactose)〈成分/副原料〉
非発酵性糖としてミルクスタウト等で甘味とボディに寄与。
使用量・残糖管理でバランスを取る。
ラクトン(γ-ラクトン等)〈香味成分〉
桃・アプリコット様の甘い果実香を与える成分群。
熟成・樽・酵母代謝で生成し、量の過不足で印象が変わる。
ラベル〈表示・パッケージ〉
銘柄名・度数・容量・生産者・原料・ビンテージ等の情報表示。
輸出入・法規で必須項目が異なるため確認が必要。
ラム(Rum)〈蒸留酒〉
サトウキビ由来の蒸留酒。
モラセス/フレッシュジュースの違い、樽熟成やエステル生成でスタイルが広がる。
ラム・アグリコール(Rhum Agricole)〈蒸留酒/カテゴリ〉
サトウキビジュースを発酵・蒸留して造るラムの系統。
青草・サトウキビの鮮烈なアロマが特徴。
ラム樽熟成(rum cask aging)〈熟成設計〉
ラム樽での熟成・後熟による香味付与。
カラメル様・トロピカル・モラセス系ニュアンスを付加し得る。
ラングドック(Languedoc)〈産地/ワイン〉
南仏の広域産地。
多様な土壌と地中海性気候を背景に価格帯とスタイルの幅が広い。
ラディコン(Radikon)〈銘柄/ワイン〉
伊フリウリの生産者。
長期スキンコンタクトの白=オレンジワインで知られ、酸化的熟成とテクスチャー表現で評価。
【関連】マセラシオン・ペリキュラー(参照:マ行)
ランビック(Lambic)〈ビール/スタイル〉
ベルギーの自然発酵系。
ブレタノマイセスや乳酸菌など複合微生物による酸味と複雑性が魅力。

り(リ)

リースリング(Riesling)〈ワイン/ブドウ品種〉
高い酸と冷涼感、柑橘〜白い花のアロマ。
辛口〜極甘口、泡まで幅広く、テロワール表現の筆頭。
リースリング・イタリコ(Welschriesling)〈ワイン/ブドウ品種〉
名称に“Riesling”を含むが、リースリングとは別種。
中〜高酸でフレッシュな白を生む。
リパッソ(Ripasso)〈ワイン技法〉
ヴァルポリチェッラのワインをアマローネの搾りかすに再接触させ、色・ボディ・アロマを補強する技法。
リキュール・ド・エクスペディシオン(liqueur d’expédition)〈ワイン/泡〉
デゴルジュマン後に補充する甘味・ワインの混合液。
ブリュット〜ドザージュ・ゼロまでスタイルを微調整する要。
【関連】リキュール・ド・ティラージュ/メトード・トラディショネル(参照:マ行)
リキュール・ド・ティラージュ(liqueur de tirage)〈ワイン/泡〉
瓶内二次発酵を起こすために添加する酵母・糖・栄養塩の混合液。
泡のきめ細かさやオートリシス期間に影響。
リダクション(還元香)〈香味評価〉
火打ち石・硫黄・ゴム様として感じることのある還元的ニュアンス。
嫌気条件・SO₂管理・還元性成分のバランスで発現。
リキュール(liqueur)〈カテゴリー〉
蒸留酒に果実・ハーブ等の香味を付与し加糖した酒類の総称。
酒税区分・表示要件は国により異なる。
リムーザンオーク(Limousin)〈樽/材〉
フレンチオークの一系統。
目が粗く、バニリン・ラクトンやタンニン供給で厚みを与える。
リュット・レゾネ(lutte raisonnée)〈栽培〉
フランスで用いられる減農薬志向の栽培概念。
テロワールや持続性との両立を図る。
リモネン(limonene)〈香味成分〉
柑橘様トップノートを与えるモノテルペン。
ホップや柑橘副原料に由来し、温度・pHで知覚が変動。
リンゴ酸(malic acid)〈成分/酸〉
シャープな酸味の主成分の一つ。
MLFで乳酸へ変換され、口当たりが丸くなる。
【関連】MLF(参照:マ行)
リターン(Vorlauf)〈ビール工程〉
ラウタリング開始時、濁った初流を槽へ戻して層を整える操作。
清澄と歩留まりに寄与。
【関連】ラウタリング
リキッドイースト(液体酵母)〈酵母〉
液状パッケージの培養酵母。
多様な株が入手できる反面、取り扱い・保冷管理が重要。
リアス・バイシャス(Rías Baixas)〈産地/ワイン〉
スペイン・ガリシアのDO。
アルバリーニョ主体の高酸・塩味感ある白で知られる。
硫酸塩(sulfate, SO₄²⁻)〈水質/ビール〉
苦味のシャープさを強調し、キレ感を与える水質要素。
塩化物イオン(Cl⁻)との比(Sulfate/Chloride)が味わいの指針になる。

る(ル)

ルプリン(lupulin)〈ホップ〉
ホップ毬花の黄色い樹脂粉。
苦味前駆体(アルファ酸)や香気成分(精油)を含む。
ルートストック(rootstock)〈栽培/台木〉
接ぎ木の台木。
フィロキセラ耐性や土壌適応性、樹勢コントロールに関与し、葡萄の成熟プロファイルを左右。
ルモンタージュ(remontage)〈ワイン工程〉
発酵タンク下部から果汁を汲み上げて果帽に散布する操作。
色・タンニン抽出や温度均一化のために行う。
ルミュアージュ(remuage)〈ワイン/泡〉
瓶内二次発酵の澱をボトル口へ集める動作(動瓶)。
手作業のピュピートルやジャイロパレットを用いる。
ルーサンヌ(Roussanne)〈ワイン/ブドウ品種〉
蜂蜜・ハーブ・オイリーな質感。
マルサンヌとブレンドして厚みと酸のバランスを取る。
ルビーポート(Ruby Port)〈ワイン/スタイル〉
ポートワインの一類型で、果実味主体・比較的若飲みのフォーティファイド。
酸・糖・アルコールの三位一体でバランスを見る。

れ(レ)

冷蔵保管(れいぞうほかん)〈品質管理〉
低温での製品・原料保管。
エステル・酸化挙動・微生物動態を安定させ、到着時の再現性を高める。
冷酒(れいしゅ)〈提供温度/日本酒文化〉
冷蔵帯で提供する日本酒のこと。
本来の「冷や(常温)」と用語を混同しないよう注意。
冷却(チラー)〈設備/ビール・清酒〉
麦汁や酒の温度を下げる工程。
プレート式熱交換器やグリコールチラーを用い、衛生とエネルギー効率の両立が重要。
レスト(温度レスト)〈ビール工程〉
βアミラーゼ・αアミラーゼなど酵素活性に合わせて温度帯を保持する操作。
発酵度・ボディ・泡持ちに直結。
レジデュアル・シュガー(Residual Sugar, RS)〈分析値〉
発酵後に残る糖分。
甘辛印象・ボディ・微生物安定に影響し、グラム/リットルなどで表示される。
レングス(length)〈テイスティング〉
余韻の長さの評価語。
香味の持続・広がりを総合的に示す。
レオロジー(rheology)〈物性・品質〉
流動・粘弾性の学問領域。
口中の粘性・泡の持続・濁りの沈降挙動などの理解に有用。
レーズニング(raisining)〈栽培・収穫〉
果粒の干し葡萄化(部分貴腐・日照・風などによる脱水)。
糖・酸・フェノールの濃縮に寄与。
レイトハーベスト(Late Harvest)〈ワイン〉
遅摘みブドウ由来の凝縮感を活かした甘口〜中甘口ワイン。
酸との均衡が鍵。
レイト・ボトルド・ヴィンテージ(LBV)〈ワイン/ポート〉
単一年のポートを樽で長めに熟成し瓶詰したスタイル。
果実味と複雑性のバランスが魅力。
レコルタン・マニピュラン(RM)〈ワイン/泡〉
自家栽培ぶどうで自家醸造・瓶詰するシャンパーニュの生産者分類。
テロワール表現の強さで注目される。
冷却安定化=酒石安定化(cold stabilization)〈ワイン/品質〉
低温で酒石を析出させ安定化させる処理。
外観安定と流通時の結晶発生抑制を狙う。
レゼルヴ/リゼルヴァ(Réserve/Reserva)〈ワイン表示〉
熟成期間や選抜ロットを示す表記。
国・産地で基準が異なるため、表示ルールを確認する。

ろ(ロ)

濾過(ろか)〈工程〉
固形分や濁りを除く物理的処理の総称。
香味保持と清澄度のバランス設計が重要で、荒ろ過・精密ろ過など段階を使い分ける。
ロイタータン(lauter tun)〈設備/ビール〉
マッシュ後に麦汁と粕を分ける濾過槽。
スパージング設計やリターン(vorlauf)が歩留まり・清澄に影響。
【関連】ラガリングマッシュ(参照:マ行)
ローストモルト〈原料/ビール〉
高温焙燥で深色・ロースト香を付与した麦芽。
スタウトやポーターの骨格となる。
ローストバーレイ(焙煎大麦)〈原料/ビール〉
麦芽化していない大麦を焙煎したもの。
強いロースト香・色付け・ドライな苦味を付与。
ロゼ(Rosé)〈ワイン/スタイル〉
淡いピンク色のワイン。
直接圧搾/短時間マセラシオン/ブレンドなどの製法があり、食中適性が高い。
ロータリー・ファーメンター(rotary fermenter)〈設備/ワイン〉
回転式発酵槽。
抽出効率を高めつつ温度均一化を図るが、過抽出リスクの管理が必要。
ローヌ渓谷(Rhône)〈産地/ワイン〉
北部はシラー主体の冷涼力強型、南部はグルナッシュ主体のブレンドが中心。
土壌と風(ミストラル)がスタイルを形づくる。
ロバート・パーカー・ポイント(RP)〈評価〉
著名ワイン評価の一つ。
市場での指標になり得るが、スタイル志向や評価年の文脈を理解して参照する。
ロット管理(lot management)〈品質/生産〉
仕込み単位・樽・タンクなどの識別と履歴追跡。
トレースとブレンド設計、品質是正の基盤。
ロンドン・ポーター(London Porter)〈ビール/スタイル〉
英国伝統の濃色エール。
ロースト穀物のチョコ・カカオ様と穏やかな苦味。
ローリングボイル(rolling boil)〈ビール工程〉
煮沸工程で液面が激しく対流する状態。
DMS除去・殺菌・ホップ等の等価抽出に重要。
ロック(on the rocks)〈提供様式〉
氷を入れたグラスで提供するスタイル。
希釈・温度・香り立ちの変化を踏まえて設計する。

共通・補助項目(参照)

ホップ基礎〈ホップ〉
アルファ酸・ベータ酸・ルプリン腺・精油の基本。
苦味・香り・泡持ち・安定性に影響。
ラガー酵母〈酵母〉
下面発酵型の酵母。
低温・長期発酵に向き、クリーンな仕上がり。
清澄〈工程総論〉
物理・化学・生物学的手段で濁りを取り除く工程の総称。
フィルター・遠心・清澄剤など。
吟醸造り〈酒造工程〉
高精白・低温長期発酵で華やかさと滑らかさを引き出す設計。
溶存酸素(DO)〈品質管理〉
酸化・劣化の主要ドライバー。
瓶詰・樽詰・移送時のDO最小化が香味維持の肝。
サービング温度〈提供設計〉
供出時の温度最適化。
スタイル別に適温帯が異なる。
精米歩合〈分析値・指標〉
米をどれだけ磨いたかの指標。
雑味低減と香味の繊細さに関与。
マッシュ〈ビール工程〉
麦芽を湯に浸し酵素でデンプンを糖に分解する工程。
温度レストやpH設計でボディ・発酵度・泡持ちが決まる。

収録(一覧・キーワード)

【日本酒(ら行抜粋)】冷酒/冷蔵保管/冷却安定化/ラベル/レオロジー/レングス ほか。
【ビール(ら行抜粋)】ラガー/ラガリング/ラウタリング/リターン(Vorlauf)/ライスラガー/ライ麦ビール/ラオホ/ロンドン・ポーター/ロイタータン/ローストモルト/ローストバーレイ/ローリングボイル ほか。
【ワイン(ら行抜粋)】リースリング/リースリング・イタリコ/リパッソ/リキュール・ド・ティラージュ/リキュール・ド・エクスペディシオン/ルミュアージュ/ルモンタージュ/ルーサンヌ/ルビーポート/レイトハーベスト/LBV/RM/ロゼ/ローヌ渓谷/ラディコン ほか。
【蒸留酒・横断】ラム/ラム・アグリコール/ラム樽熟成/ラクトン/ラクトース/硫酸塩(Sulfate)/ロット管理/ロバート・パーカー・ポイント/レジデュアル・シュガー(RS)ライトボディ/リンゴ酸 ほか。