前回の記事では、サンクチュアリ・ヴィラ軽井沢「1104号室」の圧倒的なルームツアーと、妻ユンへのささやかなホワイトデー・サプライズの様子をお届けしてきました。
広大なジャグジーバスで旅の疲れを癒やし、優雅なリビングでシャンドン ロゼとインドの青鬼を傾ける。
過酷な連勤や、終わりの見えない実家の片付けといった日常の重圧から完全に切り離された、まさに「聖域」での至福のひととき。
さて、最高のお部屋で喉を潤した後は、いよいよお待ちかねのディナータイム。
今夜の舞台は、サンクチュアリヴィラ軽井沢の車寄せへ向う石畳の途中で外観を横目に見た
中国料理『翠陽』
重厚な扉を抜け、レストランの席へと案内される。落ち着いた照明と洗練された空間……
幸運にも夜になる少し前、藍色の空が見える時間、場所でのディナーとなった。
これから始まる宴への期待に、自然と胸が高鳴っていく。
完璧なディナーの幕開け。美しい設えに心躍る
席に着くと、目の前に置かれた美しいウェルカムプレートに自然と背筋が伸びる。

ただそこにお皿が置かれているだけなのに、これから始まる特別な時間への期待を静かに、そして確実に高めてくれるから不思議だ。

テーブルにセットされたカトラリーにも、さりげない気配りが感じられる。
和食の文化を大切にし、お箸も用意されている。しかも、滑り止めのついた使いやすいタイプ。
ただデザインが美しいだけじゃない。こういう「使い手」のことを考えた細部へのこだわりが、なんとも嬉しい。
スタッフの方から丁寧な料理の説明を受け、ワクワクしながらメニューを広げる。

今回はカジュアルディナー「朱雀」コース。
ユンは少食なのでスタンダードでは多すぎたり、リッチな食材では胃がもたれたりもする。
ビュッフェは食べ過ぎるし、食事を自分で取りに行きたくないとのことで、カジュアルが1番丁度良い。
これはたまらないな……。
完璧な準備が整ったところで、いよいよ僕が心に決めていた「極上の美酒」とのペアリングをスタートさせよう。
秋田の至宝の日本酒と運命の再会
真っ白なナプキンがかけられた重厚なアイスペールが運ばれてきた。
このモダン中華のコースに、絶対に合わせたいと決めていたお酒。
秋田・新政酒造の至宝、「新政 No.6(ナンバーシックス)」
こちらは3ヶ月前のエクシブ軽井沢のルッチコーレでも嗜んだ。
今回、中華なので絶対合わせたいと思いスタッフさんにお願いした。

「かしこまりました」とスタッフの方に笑顔で応じていただき。
意外と早く黒とゴールドの洗練されたNo.6と書かれたボトルが到着した。
スタッフさんが笑顔で冷えたガラスの酒器へと美しくサーブしてくれた。

……フワッと、上質な白ワインや白桃を思わせる、エレガントで瑞々しい香りが漂ってきた。

洗練された卓上に、静かに佇む新政。
この圧倒的な特別感……
飲む前からすでに酔いしれてしまいそうだ。

グラスに注ぎ、そっと口に含む。
……美味い。
現存する最古の清酒酵母「きょうかい6号」を用い生酛(きもと)造りで醸されるこの無濾過生原酒。
生酒ならではのフレッシュな舌触りと、輪郭のくっきりとしたシャープな「酸」、そしてお米のピュアな甘みが口いっぱいに広がっていく。
この圧倒的な透明感と立体的な酸味。これこそが新政の美学だ。
この美酸が、中華の複雑なスパイスや油のコクを優しく包み込み、すっきりと切って次の一口へと誘ってくれる。
もちろんユンもご蔓延だ。

ふと窓の外を見やると、到着時に見たあの雪山の景色が、いつの間にか深い藍色の夜景へと姿を変えていた。
幻想的な夜景を眺めながら、極上のグラスを合わせる。
モダン中華と新政。
この粋なペアリングに、身も心もほどけていくのを感じる。
目にも鮮やかな前菜と、贅沢の極みへ

極上の日本酒で喉を潤したところで、「季節の前菜盛り合わせ」が登場。
深いグリーンとゴールドの縁取りが目を惹くプレート。
少しずつ上品に盛られた彩り豊かな前菜たちに、ユンの顔にパッと笑顔が咲く。

「海老とクレソンの揚げ春巻き・帆立貝の蒸し餃子」
写真からも伝わるだろうか、この春巻きの皮のパリッとした軽快な食感。
油っぽさが一切なく、海老の旨味とクレソンの風味が口に広がり……
そこへすかさず新政を一口。
まさに至福のリレーだ。
鮮やかな緑の蒸し餃子も、もちもちした皮の中に帆立の甘みがギュッと詰まっていた。
ちなみに、お酒好きの方のためにメニューも少し紹介します。

今回は「新政」一本に絞ったので頼まなかったけど、翠陽には非常に充実したフリーフロー(飲み放題)のメニューもある。
飲むペースを気にせずたっぷり楽しみたい方には、全力でおすすめしたい。
※僕なら…もちろんシャンパンコース一択!
スパークリングワインではなくシャンパンのフリーフローなんて…さすが粋ですね〜。
今回のカジュアルコースでかんがえるなら
・乾杯〜エビチリまでシャンパン
・酢豚で赤ワイン。
・汁そば&チャーハンで白ワインかシャンパン
・デザートで杏露酒ロック
あたりが最高かなとモイ的ペアリングを想像します。

ここで、コースのスープが登場。
今回は基本のメニューから少しだけプラスして
「ふかひれと干し貝柱のスープ」
にアップグレードしておいた。
せっかくの非日常空間、胃がもたれるものでもなく、量は変わらないのでユンも大丈夫。
こういうところは出し惜しみせず大人の贅沢を楽しみたい。
獅子をあしらった銀色の台座に、鮮やかな朱塗りの受け皿。
この重厚な器の特別感が、気分をさらに高めてくれました。

スプーンですくい上げると、黄金色のスープの中からたっぷりのフカヒレが顔を出す。
干し貝柱の芳醇な旨味が溶け込んだ熱々のスープが、とろとろのフカヒレにしっかりと絡みつく。
……言葉を失うほどの美味しさだ。
五感を刺激するエビチリと、仕掛けた「第2のサプライズ」

次のお皿は「海老料理二種盛り合わせ チリソース・パッションフルーツソース」。
深いブルーの器に、赤と黄色のコントラストが鮮やかに映える。
驚かされたのは手前のパッションフルーツソースだ。
口に運んだ瞬間衝撃か走る。
フルーティーな酸味とともに、なんと口の中で
「パチパチッ!」
と弾けるキャンディのような音が響き渡ったのだ。
まさかモダン中華で、耳でも楽しめる遊び心に出会えるとは……。

もちろん、奥に控える王道のチリソースも間違いない美味しさ。
大ぶりな海老のプリッとした弾力、そして奥深いコク。す正統派とモダン、二つの表情を一度に楽しめる贅沢な一皿だ。
さて、このエビチリの感動の余韻に浸っている、まさに絶妙なタイミングで……。
スタッフの方が、静かにガラスのポットをテーブルに運んできてくれた。


実は序盤のうちに、タブレットからこっそりと工芸茶「美麗天使」をオーダーし、
「ベストなタイミングでお願いします」
とスタッフの方に伝えておいたのだ。
部屋でのタオルアートに続く、僕からのホワイトデー第2のサプライズというわけだ。
「えっ、なにこれ!」と目を丸くするユン。
キャンドルウォーマーで優しく温められた透明なお湯の中で、鮮やかなオレンジ色の金木犀の花が、まるで天使のようにふわりと舞い踊る。
ここで僕はスタッフさんにこのお酒残りは部屋で楽しみたいと伝えた。

グラスに注ぐと、ホワッと甘く上品な香りが立ち上り、彼女の顔に今日何度目かのとびきりの笑顔が咲いた。
料理の進行を見計らい、完璧な間で応えてくれた翠陽のスタッフの方々。
その超一流のホスピタリティには本当に頭が下がる思いだ。

温かいお茶でホッと一息ついた後、メインのお肉料理「信州太郎ぽーくヒレ肉 鎮江香酢炒め」が運ばれてきた。
いわゆる黒酢の酢豚だが、驚くほど柔らかいヒレ肉に、まろやかで奥深い香酢ソースがねっとりと絡みつく。
一口噛み締めるごとに溢れる豚肉の甘みに、たまらず新政のグラスに手が伸びてしまう。
危険で最高の一品だ。
「両方頼める」という幸運と、至福のフィナーレ


コースも終盤のお食事。
メニューは「汁そば」か「五目チャーハン」の選択制だったのだが、悩む僕たちにスタッフの方が両方お持ちすることも可能ですよ」と素晴らしき神対応!
食いしん坊の心を見透かされたようで、もちろんお言葉に甘えることにした(笑)
一切の濁りがない透き通ったスープが五臓六腑に染み渡る汁そば。
そして大葉の香りが爽やかで、ところどころカリッとした食感も楽しめるチャーハン。
どちらも頼めるという翠陽の懐の深さに、夫婦で心から満たされていく。

締めくくりは、「杏仁豆腐と胡麻団子」
スッキリとした甘さの滑らかな杏仁豆腐で口の中をリセットし、外はカリッと中はモッチリの胡麻団子を頬張る。
この2品がディナーの完璧なフィナーレを飾ってくれた。
夜の散歩と、静寂の「聖域」へ
大満足でレストランを後にし、少し夜の風に当たることに。

せっかくなので足を延ばして本館のエントランスへ。
昼間とは違う、花柄のプロジェクションマッピングによる幻想的なライトアップに包まれている。満腹のお腹をさすりながら、静かで冷たい夜の空気を胸いっぱいに吸い込む。

光の華をまとったシャトルバスに揺られながら、ユンと「美味しかったね」「サプライズ嬉しかった」と今日の出来事を語り合い、サンクチュアリ・ヴィラへと戻る。

バスを降り、自分たちの客室エリアへ向かうと、そこにはあの看板が立っている。
【 RESIDENTS ONLY 】
良い響きだな……。
ここから先は、選ばれた者だけが立ち入ることを許される、絶対的なプライベート空間。サンクチュアリ・ヴィラ(聖域)という名にふさわしい、静寂が待っている。

1104号室の静寂性の高いぶ厚い扉を開け、暖炉を灯す。
レストランから一緒に連れて帰ってきた「新政 No.6」を愉しむ。
ソファーに深く腰掛け、暖炉の揺らめく炎を見つめながら、ユンと静かに乾杯をした。
「本当に美味しかったね」「ホワイトデー、最高だった!」
日々の喧騒から離れ、最上級の空間で、最高の料理と酒を味わい、心からのもてなしを受ける。
このようなハイクラスの滞在は、決して頻繁に、簡単に行けるような場所ではないかもしれない。
しかし、こうして大切な人の心からの笑顔を見られた時
「ああ、毎日頑張って、ここに来て本当に良かった」と、心の底から思えるのだ。
毎日、身を粉にして働いている同世代の皆さん。
もしあなたが、日々の忙しさに追われ、大切な人との時間を少しだけ犠牲にしてしまっていると感じているなら。
たまには思い切って、このような圧倒的な非日常へ足を踏み入れてみてはいかがだろうか。
僕もこの、サンクチュアリ・ヴィラ軽井沢での時間は、人生にかけがえのない「特別な時間」を刻んでくれているから。


