草津の蔵元で買い求めた一本。
八ッ場ダムの静かな環境で寝かせたという「八ッ場ダム貯蔵酒」
香りは控えめで華やかさは狙わず、透明感のある口当たりで食事に寄り添う設計だと感じた。少し温めるとするっと喉を通る。角は丸く、輪郭はきれい。
毎晩の定点に置けるタイプ。
酒造りの背景
造りは群馬・長野原の浅間酒造。同蔵の「あさまやま」シリーズは地元・吾妻郡長野原町産の酒米・改良信交を自社栽培で用い、純米は精米歩合60%・アルコール15度という食中寄りの骨格を持つ。
八ッ場ダムで寝かせる経緯
八ッ場ダムは長年の計画を経て2020年に完成。
ダム運用開始後、堤体脇にある作業用の「リムトンネル」を地域活性に活かす再利用策が検討され、温度変化の少ない環境をいかして日本酒の貯蔵に使う案が採用された。
浅間酒造はこのトンネルでの貯蔵に参画し、安定した温度帯でゆるやかな熟成を図っている。
リムトンネルはダム建設時に岩盤の亀裂へセメントミルクを圧入して地盤を補強する「グラウチング」に用いられた坑道で、夏でもおよそ15℃前後と温度が安定しているのが特徴。
貯蔵環境として理にかなうため採用に至った。
企画は段階的に展開され、2021年にはトンネル貯蔵の酒が予約販売として告知され、2022年にはダム完成式典に合わせて限定本数の貯蔵を実施。
以後はvol.ごとにベースの清酒を変えて熟成させ、毎回異なる個性を楽しめるシリーズとして継続している。
外観
香り(アロマ)
香りは控えめ。白い花と炊き立ての米のニュアンスがうっすら。含み香も淡く、食事の香りを邪魔しない設計。
味わい(パレット)
口当たりはするり。甘辛は中庸やや辛口で、米由来の旨味が芯に通る。後半はスッと収束し、日々の食中酒として扱いやすい。
質感(テクスチャー)
角が丸く、さらっと流れるテクスチャー。雑味は少なく、透明感が前面に出る。
余韻(フィニッシュ)
短〜中程度。喉奥に米の甘みが小さく名残り、きれいに切れるキレ。
適温と酒器
- 冷や(10〜15℃):輪郭が整い刺身や冷菜に。
- 常温:米の甘みがほどよく前に。
- ぬる燗(40℃前後):するっと飲める滑走感が増す。熱燗まで上げないのが吉。
小ぶりのお猪口や薄張りのぐい呑みが好相性。
おすすめペアリング
しっかり目(4種)
- 鶏もも塩焼き+すだち。脂をさらりと流し旨みを拾う。
- 舞茸の天ぷら+塩。茸の香ばしさが主役に立つ。
- 湯豆腐(昆布だし)。ぬる燗合わせで出汁感と共鳴。
- 塩鮭の焼き物。皮目の香ばしさに中辛のキレ。
手軽系(3種|コンビニ・スーパー)
- サラダチキン(プレーン)。
- 冷ややっこ+生姜と醤油少々。
- 素焼きミックスナッツ。
写真(ボトル・ラベルほか)
スペック表
| 蔵元 | 浅間酒造株式会社(群馬県吾妻郡長野原町) |
|---|---|
| 銘柄 | あさまやま〈八ッ場ダム貯蔵酒〉 |
| 種類 | 純米酒 |
| 原料米 | 群馬県長野原産 改良信交 100% 使用 |
| 精米歩合 | 60% |
| アルコール分 | 15度 |
| 貯蔵 | 八ッ場ダム リムトンネル貯蔵(企画酒) |
甘辛・濃淡チャート
香味レーダーチャート
蔵元情報・アクセス
- 蔵元:浅間酒造株式会社/浅間酒造観光センター(購入)住所:〒377-1304 群馬県吾妻郡長野原町長野原1392-10。TEL:0279-82-2045(観光センター)/0279-82-2962(蔵元代表)。
- Googleマップ:浅間酒造観光センター
- 公式サイト:asama-sakagura.co.jp / オンラインショップ:asama-shuzo.jp
- SNS:Instagram(蔵) / X(観光センター) / Facebook(観光センター)
モイの〆酒評
香りは控えめで華やかさはないが、そのぶん日常の食中向き。少し温めるとするっと飲める。
角は丸く、透明感がある。毎日の「もう一杯」を気負いなく支える常備酒。

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