ONSEN SOMMELIER × MOHILOG
湯が、
色をまとってゆく。
湧いたばかりの湯は、意外なほど澄んでいることも。
それが空気に触れ、少しずつ黄褐色や赤褐色へ。
含鉄泉は、湯の“変化”まで楽しみたい泉質です。
(長野県上田市 【閉業】渋沢温泉)
30 SECOND GUIDE
含鉄泉を、30秒で。
「宿の温泉が含鉄泉。どんなお湯?」
まずはここだけ読めば大丈夫です。
鉄を一定量以上含む温泉。
湧出直後は透明に近くても、
空気に触れて鉄が酸化すると、
黄褐色や赤褐色へ変わることがあります。
※赤茶色の湯=必ず含鉄泉、という意味ではありません。 正確な泉質は温泉分析書で確認します。
なぜ赤くなる? 鉄はどのくらい入っている?
ここから少しずつ、含鉄泉の中身へ。
ABOUT IRON SPRING
そもそも、含鉄泉とは?
含鉄泉とは、
温泉水1kg中に含まれる
総鉄イオン(鉄II+鉄III)が20mg以上の療養泉です。
20mgと聞くとわずかな量に感じますが、
温泉の世界では、これが含鉄泉を名乗る基準。
鉄を含んだ湯が地上へ出て、
空気中の酸素と出会うことで酸化が進み、
赤褐色へ変化することがあります。
地下から出たばかりの段階では、
鉄がまだ酸化しておらず透明に近いことも。
浴槽へ流れる間に空気へ触れ、
少しずつ色をまとっていきます。
WATCH THE COLOR
含鉄泉は、“色の途中”を見る湯。
含鉄泉の面白さは、
最初から完成された色ではないところ。
湯口から流れ出た瞬間。
浴槽へ届いたころ。
浴槽の縁に積み重なった析出物。
同じ源泉なのに、
場所と時間で色が違って見えることがあります。
温泉が、目の前で歳を重ねていく。
そう考えると、
赤茶色の浴槽も少し違って見えてきます。
「濁っている」のではなく、
鉄が空気と出会った痕跡。
含鉄泉は、
温泉の化学変化を目で楽しめる泉質でもあります。
READ THE ANALYSIS
含鉄泉にも、タイプがあります。
日本温泉協会では、 含鉄泉を陰イオンの違いによって、 主に次のタイプに分類しています。
炭酸水素イオンを多く含むタイプ。
硫酸イオンを多く含むタイプ。
実際の泉質名では、
塩化物泉など別の特徴と組み合わされることもあります。
有馬温泉の金泉が、
含鉄・ナトリウム-塩化物強塩高温泉と
表示されるのが分かりやすい例です。
OFFICIAL INDICATIONS
ここは重要。含鉄泉と「貧血」の話。
含鉄泉と聞くと、
「鉄が入っているなら貧血によさそう」と思いますよね。
ただし、ここは少し注意が必要です。
現在の公的な泉質別適応症では、
含鉄泉固有の適応症として示されているのは
飲用による鉄欠乏性貧血です。
「含鉄泉へ入れば鉄を皮膚から吸収して貧血が改善する」
という意味ではありません。
そして飲泉は、
どこの含鉄泉でも自由にできるわけではありません。
飲用許可のある場所で、
現地に表示された方法と量を守る。
これが前提です。
HOW TO ENJOY
含鉄泉、どう楽しむ?
含鉄泉だからといって、
特別に長く入る必要はありません。
むしろ、
色・香り・湯口の変化まで見るのがおすすめです。
浴槽との色の違いをチェック。 湧きたての湯は意外に澄んでいるかもしれません。
金属を思わせる香りを感じる湯も。 強く吸い込まず自然に楽しみます。
泉質よりも湯温を優先。 まず3〜10分程度を目安に無理なく。
赤褐色の析出物が、 温泉が流れてきた時間を物語っていることも。
GOOD MATCH
こんな温泉旅に、似合います。
無色透明だけではない、 温泉の色まで楽しみたい旅へ。
湯口、浴槽、析出物。 一つずつ眺めるだけでも面白い。
古い共同浴場や泉源など、 土地の物語と一緒に味わいたい湯。
一目で「いつもの湯とは違う」と感じる、 個性派を探している日に。
ONSEN DESTINATIONS
含鉄泉に出会える温泉地
含鉄泉を代表する存在。
神戸市公式でも、
天神泉源などの金泉は
含鉄・ナトリウム-塩化物強塩高温泉と案内されています。
長野県・秋山郷にある温泉。
日本温泉協会でも含鉄泉として掲載されており、
時間とともに湯の色が変化する温泉として紹介されています。
※温泉地内でも源泉や施設によって泉質は異なります。 実際に利用する施設の温泉分析書をご確認ください。
Q & A
もうちょっとだけ、含鉄泉。
赤茶色なら、全部含鉄泉?
いいえ。
色だけでは泉質を判断できません。
含鉄泉を名乗るには、
総鉄イオン20mg/kg以上という基準があります。
湧きたてから赤いの?
必ずしもそうではありません。
湧出直後は透明に近く、
空気に触れて鉄が酸化することで
黄褐色や赤褐色へ変わることがあります。
含鉄泉に入れば貧血にいい?
含鉄泉固有の「鉄欠乏性貧血」という適応症は
飲用に対して示されているものです。
入浴による鉄分補給を意味するものではありません。
温泉なら飲んでもいい?
いいえ。
飲泉は飲用許可された場所だけで行います。
浴槽のお湯や、許可の表示がない源泉を
自己判断で飲むのはやめましょう。
MOI’S NOTE
温泉ソムリエ モイのひとこと
含鉄泉って、
写真を見るだけでもちょっと身構えます。
赤茶色の浴槽。
ごつごつ付いた湯の析出物。
「これは相当クセが強そうだぞ」と。
ところが、僕が見たいのは
赤い湯そのものだけじゃない。
湯口を見る。
「あれ? こっちは意外と透明だ」
そこから浴槽へ目を移すと、
ちゃんと色が変わっている。
そういう瞬間に出会うと、
温泉が急に“生き物”みたいに見えてくるんです。
含鉄泉は、色のある湯ではなく、
色が生まれていく湯。
モイ的には、
そこが一番面白いところです。
本記事は温泉を楽しむための旅行者向けガイドであり、 医療上の効果を保証するものではありません。

