潮騒と対話する湯──黒根岩風呂の舞台へ

夜明け前の海は、墨を溶かしたように深く静か。
そこへ朝陽が差すと、漆黒のキャンバスに金の筆で一筋の光が描かれる。
伊豆・北川温泉「黒根岩風呂」は、その光が揺れる波と同じ高さで岩組みの湯舟を構え、海抜ほぼゼロメートルの解放感を感じさせる。
岩と湯と潮風だけ──質素を極めた設計

黒塗りの板壁に「男」「女」の暖簾が掛かるだけの素朴な小屋。
暖簾をくぐれば、岩で囲んだ2つの湯舟がひっそり待つ。
シャワーも洗い場もない潔さは、身体より心を洗う風呂である証明。
※カランは一つある
潮風が肌に付いた湯の塩を乾かし、湯がまた肌の塩を溶かす循環が心地よい。
泉質 塩をまとう温熱ベール系

湧き出す湯は
ナトリウム・カルシウム-塩化物泉
海水に近いミネラルを含むため皮膜効果が高く、湯上り後もしばらくポカポカが逃げない「熱の湯」
保温&殺菌に優れ、傷や冷え性のケア向きの泉質。
同じ泉質を楽しめる“塩の湯”仲間
・熱川温泉共同浴場(車15分)──湯けむり坂の上でムーンロード鑑賞。
・稲取温泉「雛の足湯」(車30分)──港を見下ろすテラス足湯。
・用宗みなと温泉(静岡市)──駿河湾と富士山を望む港町スパ。
アクセス/Googleマップ

伊豆急行「伊豆北川駅」から徒歩約15分。
国道135号線を海側へ降りると黒い建物と波打ち際の露天が見えてくる。
利用案内(2025年7月現在)

- 営業時間:10:00〜18:00(最終入場17:45)
- 料金:大人700円・小学生300円(現金/PayPay)
- 休業:高波・荒天・工事時は臨時休業
- 駐車場:無料15台(小屋まで徒歩1分)
- 備品:シャンプー/ドライヤーなし。タオル必携。
温泉ソムリエ・モイのタオル評

黒根岩風呂は、海と湯が溶け合う波打ち際の絶景野天。
無色透明でベタつきは感じない。
さらりとした塩化物泉が、潮風とともに肌を包み、湯口では生の源泉そのままの高温(60℃〜70℃位か?)を感じさせながら、湯船では42〜43℃と感じる快適な熱さ。
岩に刻まれた「アメリカを見ながら入る野天風呂」の文字は洒落っ気たっぷりで、湯口近くの朱に染まった岩肌が温泉の力強さを物語る。
海側へにじり寄れば、防波堤の視線と引き換えに、空と海を独り占めする開放感が広がる。
波の音と景色、岩を伝う湯が、心に残る温泉です。
まとめ──波と湯のハーモニーを未来へ
台風で破壊されても湯守が立ち上がり修復を重ねてきた黒根岩風呂。
それは“入る”行為を超え、自然と共存する祈りを湯に託す物語。
次の満潮が来ても、次の世代が来ても──この湯が海と語らい続けることを願って湯をあとにした。