山形の御当地料理 鳥中華
前回、朝4時過ぎに起きて。
温泉に浸かり、コーヒーを飲み、自転車で花咲山へ登り、戻ってまた温泉。
我ながら、朝からよく動きました。
そしてようやく。
本来の旅館の朝らしい時間です。
朝ごはんをいただきましょう。
▶ 前回のお話|古窯2泊目①「朝4時、温泉と早朝ライド。まだ朝食前です」
目次
ようやく朝食。古窯の朝ビュッフェへ
公式サイトでは、星川調理長がこだわった54種類の朝ビュッフェとして紹介されています。
なかでも野菜は、上山の契約農家『百姓園』から届けられる朝採り野菜を使用しているとのこと。
昨夜の会席とはまた違って、朝は好きなものを、好きなだけ。
旅館のビュッフェって、つい欲張りたくなるんですよね……。
はじめにひとつだけ。
とても立派で種類豊富な朝食だったのですが、写真データを一部紛失してしまい、紹介できる料理が少なめです。
すみません。。
鳥の巣のような籠に、ころころと並んでいます。
ただ料理を置くのではなく、こういう見せ方にも少し気を使ってくれる。
朝から楽しいですね。
ライブキッチンでは、玉子焼きが手際よく焼かれていました。
ん……?
よく見ると、焼いているのは古窯の星川直樹調理長じゃないですか。
古窯公式でも、朝食は『星川調理長がこだわった54種類の朝ビュッフェ』と紹介されています。
その料理長自ら、朝から目の前で玉子焼きを焼いている。
こういうの、ちょっと嬉しくなります。
焼き上がった玉子焼きは、表面にほんのり焼き色。
中はふっくら、ちょうど良い焼き加減です。
そして、よく見ると……。
『古窯』の焼印。
こういうひと手間、やっぱり好きなんですよね。
朝食の一品にも、ちゃんと古窯らしさがいる。
派手に主張するわけではないけれど、こういう小さなところに宿の気遣いを感じます。
もちろん、お味も美味しい。
せっかくなら、手が空いたところで星川調理長に声をかけてみたいなと思っていました。
古窯の料理のこと。山形の食材のこと。
聞いてみたいことはいくつかあったのですが……。
タイミングを見ているうちに、チャンスを逃してしまいました。
まあ、こういう『次に残ったこと』があるのも旅ですね。
また古窯へ来る理由が、ひとつ増えました。
つや姫、芋煮、鳥中華。朝から山形をいただく
旅館の朝食へ来ると、普段ならパンでもいい僕が、なぜか白いご飯を選びたくなります。
なんと言っても、古窯の推し銘柄のつや姫ですから。
山形で育てられた『つや姫』
その名の通り、一粒一粒が美しい光沢です。
箸で口に運ぶと、柔らかすぎず輪郭のはっきりとした粒感。
ゆっくり噛みしめるほどに、お米本来のじんわりとした甘みと旨みが広がります。
美味しい……。
昨日から山形をたっぷり歩いて、自転車でも登って、温泉にも何度入ったことか。
朝の身体に、つや姫がしっかり入っていきます。
なんだろう。
こういう味って、どうしてこんなに落ち着くのでしょう。
旅館の華やかな料理の中に、地に足の着いた土地の味がある。
つや姫との相性も抜群です。
山形のご当地グルメ『鳥中華』です。
もともとは蕎麦屋のまかないから生まれたとされる麺料理で、蕎麦つゆを思わせる和風だしに中華麺と鶏肉を合わせた、山形ならではの一杯。
ラーメンなのに、どこか蕎麦を食べているような優しい和の味わいがあります。
鶏の旨味が溶け込んだあっさりしただしで、朝でもするすると入ってしまう。
つや姫。
芋煮。
そして鳥中華。
朝食のビュッフェを歩いているだけなのに、ちゃんと山形を旅しているんですよね。
レタスにブロッコリー、ミニトマト。
古窯では朝食ビュッフェのために、地元の契約農家から朝採り野菜を届けてもらっているそうです。
豪華な料理も嬉しいけれど、旅が続く朝には、こういう瑞々しい野菜が妙にありがたい。
飾り気のない『最上』の文字が、逆に気になります。
山形県新庄市にある篠原商店が手がける『最上納豆』
今回いただいたのは、カップ入りの『うまい納豆』です。
篠原商店は、奥羽山脈・神室山水系の豊かな地下水を使い、昔ながらの手造り納豆を70年以上作り続ける造り手。
『うまい納豆』は平成7年の全国納豆品質鑑評会で最優秀賞を受賞しています。
ふっくらとした大豆の旨みと、つや姫の真っ直ぐな甘み。
やっぱり合います。
白いご飯、芋煮、鳥中華、そして納豆。
旅館まで来て、ずいぶん普通じゃないかと思うでしょう。
でも違うんです。
山形を味わい、山形を感じられることが、僕は嬉しいのです。
ライブキッチンで揚げたてのイカフライ、こちらは鳥中華にいれるトッピングのようでしたが、別皿で美味しくいただきました。
気になったものを取り、食べて、また会場をふらっと歩く。
ビュッフェの良さですね。
でもついつい食べ過ぎる傾向があるので…頑張って小盛りにして食べ過ぎないようにしました。
食後のコーヒーで、また古窯らしさに気づく
ふぅ……。
朝4時から始まった長い朝も、ここでようやく一息です。
そして何気なくカップ&ソーサーへ目を向けます。
白地に、控えめにあしらわれた花。
『あれ……これ、紅花じゃない?』
またしても古窯です。
ここから少し、コーヒーカップひとつで話が長くなります。
読者の皆さま、すみません。
でも、僕が古窯を好きになった理由のひとつが、このカップに詰まっている気がするんです。
ベニバナは、山形県の県花。
単に『山形を代表する花』というだけではありません。
山形の紅花栽培と加工には約450年もの歴史があり、江戸時代には染料の原料となる『紅餅』が最上川の舟運で酒田へ集められ、そこから北前船によって京都へ運ばれていました。
紅花は、この土地の暮らしや産業、文化を長く支えてきた存在なんですね。
それを古窯は、
『山形名物、紅花です』
と声高に見せるのではなく、宿泊客が食後に何気なく手にするカップへ、そっと溶け込ませている。
こういうところなんですよね。
昨日、館内の絨毯にさくらんぼを見つけたときにも感じました。
質の高いものなら、何でもいいわけではない。
そこへ山形の花を。山形の果物を。山形の食材を。
自分たちの土地を、宿の中へきちんと残している。
既製品の真っ白なカップでも、コーヒーは飲めます。
でも、あえてこの器を選ぶ。
そこに、自分たちの土地への静かな誇りを感じました。
説明されなければ、気づかずコーヒーを飲み終えてしまう人もいるでしょう。
でも僕は、こういうものを見つけると嬉しくなります。
旅先だから少しゆっくり見る。
だから、いつもなら通り過ぎてしまうものに気づく。
古窯での時間は、そんな小さな発見を何度もくれました。
参考:山形県公式|県の花「べにばな」
参考:山形県公式|歴史と伝統がつなぐ山形の「最上紅花」
朝4時に起きて。
温泉へ入り。
花咲山を自転車で登り。
また温泉へ入り。
そして、ようやく朝ごはん。
ずいぶん長い朝でした。
でも、まだ古窯での時間は終わりません。
コーヒーカップを静かに置いて。
さて、今日はどんな一日になるのでしょう。

