【温泉分析書の見方】ここだけ見れば湯がわかる|超初心者向け・温泉の説明書

ONSEN SOMMELIER × MOHILOG

HOW TO READ ONSEN

温泉分析書、
全部読まなくていい。

脱衣所の壁にある、細かい数字がびっしり並んだ一枚の紙。

最初から全部理解しようとすると、 たぶん温泉へ入る前に疲れます。

まず見るのは5項目だけ。
そして、その横にある温泉の利用状況。

これだけで、 その湯がどんな温泉なのか、 かなり見えてきます。

30 SECOND GUIDE

最初は、これだけ見ればOK。

分析書5項目+利用状況1つ。
まずは、この6ポイントだけ覚えてください。

01 TYPE 泉質名

何泉なの?
まずはここ。

02 pH 酸性・アルカリ性

湯の性格を知る
大きな手がかり。

03 CONCENTRATION 成分量・浸透圧

薄い?濃い?
低張性・高張性?

04 TEMPERATURE 源泉温度

地上へ出たとき
何℃なの?

05 FLOW 湧出量

1分間にどれくらい
湧いている?

+
HOW THE ONSEN IS USED 温泉利用状況

加水・加温・循環・ろ過・消毒。
「この源泉を、浴槽でどう使っているか」はここで確認します。

まず覚えるのは、この違い。
温泉分析書 この湯は、何者か。
温泉利用状況 その湯を、どう使っているか。

「源泉かけ流しなの?」を知りたいときも、 泉質名だけでは分かりません。

加水・加温・循環再利用・ろ過・消毒などの掲示を あわせて見てみましょう。

ここまで読めば、もう十分。

ここから先は、
「もうちょっと温泉を知りたくなった人」へ。

↓

01 / TYPE

まず「泉質名」を見る。

温泉分析書を見つけたら、 最初に探すのは泉質という欄。

たとえば、

EXAMPLE ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
(低張性・弱アルカリ性・高温泉)

……長い。

最初は全部解読しなくて大丈夫です。

まず、 「塩化物泉」「炭酸水素塩泉」という 見覚えのある言葉を拾ってみる。

それだけでも、 湯の正体が少し見えてきます。

BEGINNER’S POINT 泉質名が長くても、怖がらない。

複数の特徴を持っている温泉では、 泉質名も長くなります。

長い泉質名は、 「この湯には個性がいくつもあるんだな」 くらいから始めれば十分です。

現在の療養泉は10種類。

泉質それぞれの特徴は、 各ページで30秒ダイジェストから詳しく紹介しています。

02 / pH

次は「pH」を見る。

pHは、 その温泉が酸性なのか、 アルカリ性なのかを見る数字です。

数字が小さいほど酸性。
数字が大きいほどアルカリ性。

酸性 中性 アルカリ性
pH3 pH6 pH7.5 pH8.5
pH3未満 酸性
pH3以上〜6未満 弱酸性
pH6以上〜7.5未満 中性
pH7.5以上〜8.5未満 弱アルカリ性
pH8.5以上 アルカリ性

pHは、 肌ざわりや刺激感を想像する手がかりになります。

ただし、 アルカリ性だから良い温泉、 酸性だから強い温泉という順位ではありません。

その湯の性格を知る数字のひとつです。

03 / CONCENTRATION

「低張性・等張性・高張性」って何?

分析書の泉質名のあとに、 こんな文字が書かれていることがあります。

低張性・弱アルカリ性・高温泉

この最初の「低張性」が、 温泉の浸透圧を表しています。

難しく考えなくて大丈夫です。
初心者なら、

LOW 低張性

体液より
薄い

SAME 等張性

体液と
近い濃さ

HIGH 高張性

体液より
濃い

8,000mg/kg未満 低張性
8,000以上〜10,000mg/kg未満 等張性
10,000mg/kg以上 高張性
高張性=成分が身体へどんどん入る、ではありません。

浸透圧は、 温泉水と体液の「濃さの違い」を見るための分類です。

人間の皮膚にはバリアがあるため、 高張性だから温泉成分がそのまま大量に身体へ入り込む、 という単純な話ではありません。

初心者ならまず、 「低張性=比較的薄い、高張性=比較的濃い」 くらいで十分です。

A LITTLE DEEPER

「成分量が多い=良い温泉」でもない。

温泉分析書には、 温泉水1kg中にどれくらいの成分が溶けているかが mgという単位で書かれています。

ここでよく目にする数字が 1,000mg/kgです。

1,000
mg / kg 泉質を考える大きな境目のひとつ

ガス性のものを除く溶存物質が 1,000mg/kg以上あると、 主なイオン成分によって 塩化物泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉などの 泉質名がつく場合があります。

ただし、 1,000mg/kg未満でも、 硫黄・二酸化炭素・鉄・よう素・ラドンなどが それぞれの基準を満たせば療養泉になります。

だから、 成分総量だけで温泉の価値は決まりません。

04 / TEMPERATURE

「泉温」は、浴槽の温度ではありません。

分析書に書かれている泉温は、 基本的に源泉が地上へ湧出したとき、 または採取されたときの温度です。

「泉温28℃なのに、 浴槽は41℃だった」

これはおかしくありません。
加温して浴用に適した温度へ調整している可能性があります。

〜24.9℃ 冷鉱泉
25〜33.9℃ 低温泉
34〜41.9℃ 温泉
42℃〜 高温泉

ここで、 あとで見る「加温しています」という掲示と つながってきます。

分析書と利用状況を一緒に読むと、 浴槽へ来るまでの湯の道筋が少し見えてきます。

05 / FLOW

「湧出量」も見てみる。

湧出量は、 その源泉から1分間にどれくらいの温泉が出ているか。

多くの場合、 L/分で書かれています。

120
L / MIN 1分間に120L湧く、という意味。

さらに、 自然湧出・自噴・動力揚湯などの 表記が見つかることもあります。

湧出量が多ければ絶対に良い、 自噴なら必ず上質、 という単純な話ではありません。

でも、 「この浴槽へ、どれくらいの源泉が供給できるんだろう?」
と考える材料にはなります。

+1 / HOW THE ONSEN IS USED

で、「源泉かけ流し」なの?

ここまで読んで、 一番気になる方も多いと思います。

でも、 温泉分析書だけでは、 浴槽でどう湯を使っているか分からないことがあります。

そこで見るのが、 浴室や脱衣所などに掲示されている 温泉利用状況です。

01 加水

水を加えている?

02 加温

源泉を温めている?

03 循環

浴槽の湯を再利用している?

04 ろ過

循環時にろ過している?

05 消毒

どんな消毒をしている?

VERY IMPORTANT 「循環=悪」「かけ流し=正義」で終わらせない。

源泉温度が低ければ、 入浴できる温度まで加温する必要があります。

源泉が熱すぎれば、 温度を下げるために加水する場合もあります。

衛生管理のために、 循環ろ過や消毒を行う施設もあります。

大切なのは、 「している・していない」だけでなく、 なぜそうしているのかを見ること。

温泉法では、 加水・加温・循環再利用・ろ過・入浴剤・消毒を行っている場合、 その旨や理由などを掲示することになっています。

「源泉かけ流し」という一言だけを見るより、 こちらを読む方が、 実際の湯使いがずっとよく分かります。

LOOK, SMELL, TASTE

数字じゃないところも、面白い。

温泉分析書には、 数字ばかりが書かれているわけではありません。

知覚的試験という項目には、 実際に人が見たり、嗅いだりして確認した 温泉の特徴が記されています。

COLOR 色

無色・淡黄色・黄褐色など

CLEARNESS 清濁

澄明・微混濁など

SMELL 臭い

硫化水素臭・よう素臭など

TASTE 味

塩味・酸味・苦味など

無色澄明・強塩味・微硫化水素臭……

難しい化学式より、 こっちの方が最初は楽しいかもしれません。

しかも、 湧出直後と分析室へ持ち帰ったあとで 色や香りが変わる温泉もあります。

含鉄泉が空気に触れて色づいたり、 揮発性の成分が時間とともに変化したり。

温泉は、湧いたあとも変化している。
そんなことまで分析書から見えてきます。

INDICATIONS

「効能」を見るなら、適応症を見る。

分析書や別表には、 適応症という項目があります。

一般に「温泉の効能」と呼ばれるものに近い部分ですが、 医療上の治療効果を保証する言葉ではありません。

一般適応症 療養泉に共通するもの
泉質別適応症 その泉質に設定されたもの

「この泉質にはどんな適応症がある?」と思ったら、 先ほどの10泉質ページへ。

モヒログでは、 公的な適応症と 旅先で感じる肌ざわりや湯上がりの印象を 分けて紹介しています。

LET’S READ ONE

では、1枚読んでみる。

ここまで来たら、 もう温泉分析書は「謎の紙」ではありません。

たとえば、 こんな表示があったとします。

読み方の例

泉質
ナトリウム-塩化物泉
(高張性・中性・高温泉)
pH
7.2
溶存物質量
12,500mg/kg
泉温
47.3℃
湧出量
120L/分
MOHI READ

「塩化物泉なんだ」
↓
「pH7.2だから中性」
↓
「12,500mgだから高張性。けっこう濃い」
↓
「源泉47.3℃だから高温泉」
↓
「1分120L湧いている」

ほら。もう読めています。

※上記は読み方を説明するための架空の分析例です。

MOI’S NOTE

温泉ソムリエ モイのひとこと

昔の僕なら、 脱衣所に温泉分析書があっても たぶん素通りしていました。

数字。
化学式。
聞いたことのないイオン。

……早く温泉入りたい。

まあ、普通そうですよね。

でも最初から、 全部読む必要なんてありません。

最初の旅では泉質名を見る。

次の温泉ではpHを見る。

その次に、 「あれ? 高張性って書いてあるぞ」と気づく。

一回の温泉で、ひとつ分かればいい。

そうやって少しずつ読めるようになると、 脱衣所の壁に掛かった一枚の紙が、 ただの難しい成分表ではなくなってきます。

温泉へ入る前に、 ちょっとだけ見る。

そして湯船へ入って、 「なるほど。これが塩化物泉か」なんて考えてみる。

あれは成分表というより、
その温泉の説明書です。


分かる項目が一つ増えるだけで、 温泉旅はちゃんと面白くなります。

本ページは、環境省「鉱泉分析法指針」、 温泉法に基づく掲示制度、 日本温泉協会「温泉分析書の見方」、 温泉ソムリエ公式の温泉分析書解説を参考に、 初めて温泉分析書を見る方にも分かりやすい形で構成しています。
温泉の成分や利用状況は施設・源泉ごとに異なります。